

「ボタン・ホール(buttonhole)」とは、文字通り「ボタンを通す穴」のことです。通常、ボタンがある服には、それに対応するボタン・ホールもあります。しかし、フォーマルウェアに限っては、このルールに例外があります。
たとえば、燕尾服(イヴニング・ドレス)。前に二列のボタンが並んでいますが、それを留めるボタン・ホールは付いていません。そもそも燕尾服は前を開けて着るのが正しいので、ボタン穴は不要なのです。つまり、フォーマルウェアには「飾りとしてのボタン」も存在し、実際に留めるためのものとは限らないということです。
留めない「ボタン・ホール」もある
さらに面白いのが、「留めないボタン・ホール」の存在です。特に、上着(コート)の一番上、襟にある穴。これも「ボタン・ホール」と呼ばれますが、実際にはボタンを通すためのものではありません。これは、昔あった「第一ボタン用の穴」の名残であり、現在では装飾や慣習として残された"歴史の遺跡"のようなものです。
「本物のボタン・ホール」とは?
一見同じように見えるボタン・ホールにも、本物と装飾用のものがあります。本物のボタン・ホール:実際にボタンを通して留めることができる仕立て。飾りのボタン・ホール(眠り穴):見た目だけで、ボタンを通せないもの。よい服を見分けるのは難しいですが、「本物のボタン・ホールがあるかどうか」は、品質を判断するひとつのポイントになります。