ドレス・シューズ
フォーマルシューズと「足許を見る」話


「足許を見る」という言葉は江戸時代に生まれました。旅人が宿に泊まる際、番頭が足袋や草鞋の傷み具合から旅人の疲れや身分を見て宿賃を決めたことが語源です。
現代でも、靴の印象で扱いが変わることがあります。たとえば、高級ホテルでは上等な靴を履いている方が好待遇を受けやすいものです。そのため、フォーマルな場では靴選びが重要です。
燕尾服にはエナメルレザーの「ボール・シューズ(舞踏靴)」を合わせるのが基本。これは宮廷靴の流れを汲み、軽くて履き口が浅いデザインで、ダンスを意識して作られています。
食後のダンスで、女性のドレス裾を靴墨で汚さないよう、光沢のあるエナメル素材が選ばれたのです。
ただし、ドレスシューズは必ずしもエナメルに限りません。ブラック・サテンやベルベットなど、ドレスを汚さない素材であれば適しています。大切なのは「淑女への配慮」が靴に表れていることなのです。